難病で歩けなくなった50代が杖を2種類使い分けた理由|T字杖とロフストランドクラッチの選び方と体験談

2種類の杖があってよかった

杖は、一種類あればいいわけではありませんでした。

最初はT字型の一本杖ロフストランドクラッチの2種類を使い分けていました。

でも今は、ほぼT字杖だけを使っています。
ロフストランドクラッチが不要になったのではなく、
リハビリを続けて足の筋力が少しずつ戻ってきた結果です。

道具の使い方が変わることは、回復の証でもある。
今日はそんな話を正直に書いていきます。

杖がないと歩けない事実

杖が必要になった経緯

多発性硬化症(視神経脊髄炎)を発症してから
両足に障害が残りました。

入院中は車いす生活でした。リハビリを重ねて、
今は杖を使えば自分で歩けるようになりました。
それだけでも、本当にありがたいことだと思っています。

ただ、「杖を使えば歩ける」といっても、
すべての場面で同じ杖が使えるわけではありません。
退院直後は足の筋力がほとんど戻っておらず、
一本のT字杖だけでは体を支えきれない場面がありました。
長距離の移動や、体がふらつく日は特にそうでした。

そこで2種類の杖を使い分けるようになりました。

入院中に借りたのがロフストの杖

1本目|T字型の一本杖

写真の1枚目がT字型の一本杖です。

木製調の握りやすいT字グリップに、シルバーのアルミシャフト。
高さ調整ができるので、自分の体に合わせてセッティングしています。

T字杖が向いている場面

  • 近所への短い外出
  • 屋内での移動(台所・廊下・トイレまでの動線)
  • 体調が比較的安定している日

T字杖は軽くて扱いやすく、
片手で自然に持てるのが大きなメリットです。
見た目もすっきりしているので、
外出時に持ち歩いても気になりません。
車での移動の時も邪魔になりません。
主夫として台所に立つとき、
そばに立てかけておける手軽さも助かっています。

2本目|ロフストランドクラッチ(前腕固定型杖)

写真の2枚目がロフストランドクラッチです。

前腕をカフ(輪状のサポーター)に通して固定し
グリップを握って使うタイプの杖です。
腕全体で体重を支えられるため、
T字杖よりもサポート力が格段に上がります。
病院のリハビリではこれが最初でした。
ようやく杖かと、今でも思い出します。
足への負担が大きい方に向いている杖です。

退院直後はこの杖に本当に助けられました。

通院や買い物など長距離を歩く場面、
足のしびれや痛みが強い日、
疲労が蓄積しやすい外出先での移動。
そういった場面でロフストランドクラッチは
頼りになる存在でした。

腕で体重を支えられる分、
足への負担が分散されます。
カフで前腕を固定するので、
グリップから手が離れても杖が
腕から落ちにくい点も安心感がありました。
しばらくは車いすでの移動の時
この杖と一緒でした。

気づいたら、T字杖しか使わなくなっていました

ところが、最近あることに気づきました。

ロフストランドクラッチを、
ほとんど使わなくなっていたのです。

最初は意識して使い分けていました。
長距離の外出にはロフストランドクラッチ、
室内や近所にはT字杖、という具合に。
でもいつの頃からか、外出先でも
T字杖だけで済むようになっていました。

理由を考えてみると、
おそらく足の筋力が少しずつ戻ってきたからだと思います。

毎日のリハビリと、
主夫として台所に立ち続けた時間が、
少しずつ足を鍛えていたのかもしれません。
トレーニングチューブで腹筋を鍛えてきたことも、
体幹の安定につながっているのかもしれません。
意識して筋力をつけようとしていたわけではありませんが、
日常の積み重ねが少しずつ体を変えてくれていたのだと思います。

ロフストランドクラッチは今、
部屋の隅に立てかけてあります。
使わなくなったことは、
決して無駄だったわけではありません。
足が弱っていたあの頃、
あの杖がなければ外に出られない日もあったからです。
必要な時期に、必要な道具が助けてくれた。
それだけのことです。

道具は、体の状態に合わせて変わっていくものです

2種類の杖を使ってきて、改めて感じることがあります。

道具は固定されたものではないということです。
体の状態が変われば、必要な道具も変わります。
ロフストランドクラッチが必要だった時期があり、
T字杖だけで済むようになった今がある。
それは回復の記録でもあります。

「杖を使うのは恥ずかしい」と思っていた時期もありました。
最初は子供たちも、父親がこんな状態なのが
外に知られる事。特に一緒に行動することが
ためらわれたのではないかと思います。
でも今は、上手に道具を使うことが、
長く動き続けるための大事な選択だと思っています。
そして、使わなくなった道具は、
回復してきた証として
部屋の片隅で静かに見守ってくれています。

最初はロフストを使わないと歩けなかった

T字杖は手軽で日常使いに向いていて、
ロフストランドクラッチは足が弱っている時期や
長距離移動に頼りになります。

今はT字杖だけで生活できるようになりましたが、
ロフストランドクラッチが
必要だった時期があったからこそ、
今があります。
難病を抱えながら生活していると、
道具ひとつで一日の疲労感がかなり変わります。
そしてその道具が変わっていくことが、
少しずつ前に進んでいる証でもあります。

体と相談しながら、今日も杖を手に取っています。